「そういえば私潤の部屋に入るのは初めてだわ」
律義な女だ。同居しているというのにプライバシーをきちんと守ってくれていた。別に見られて困るようなもんなんか置いちゃいないんだが…。
菫はきょろきょろと見回して観察している。
「壁が青っていうのは落ち着きがないわね」
「そうか?つーか青じゃなくて藍色だけどね!」
「そういえば潤の実家の部屋も空色に雲の絵が描いてあったわね。
覚えている?小さい頃私と潤が絵の具で壁に絵を描いて、おばちゃんに叱られたわね」
「すっげー覚えている。俺は綺麗な絵を壁に描きたかっただけなのに、かーちゃんがめちゃくちゃキレてさ。
空色にしたかったのーってギャーって泣いたら、あの青空の壁紙を業者さんを呼んで張り直してくれたんだ」
「アハハ、懐かしいねぇ」
今のこの藍色の壁だって業者に頼んでもらったんだ。菫は落ち着きがないと言うけれど
後取り付けたシャンデリアの形もトゲトゲしてて珍しい物で気に入っている。
その代わり家具は茶色で統一しているし、物も余り置かずにシンプルな物ではある。
辺りを一通り見回した後、菫はベッドに腰を下ろした。俺は何となく距離感が掴めないまま、パソコンのディスクがある机の前の椅子に腰を下ろす。
そうすると何かを発見したかのように菫が再び立ち上がり、本棚の前に目を落とす。