「変わらない気持ちって何よ……」
「俺は菫とした昔の約束を忘れてない。1日だって」
その言葉に胸が高鳴る。
’菫ちゃん大きくなったら僕と結婚してね’
まさか、あんな子供の戯言を、潤も覚えていたというの?
こちらを見ていた視線が段々と下に下がっていく。それと同時に掴んだ腕も徐々に弱々しくなっていく。
「俺小さい頃からずっと菫が好きだったんだと思う。
だからこうやって怒っているのもただのヤキモチなのかもしれない…
そうなんだと思うけど、どうかな?」
再び顔を上げた潤が、大きな瞳をこちらへ向ける。
…どうかな?って私に訊かれても…それはあんたの気持ちで私の知ったこっちゃない。
大体好きって何よ。小さい頃にした結婚の約束なんて何の意味も持たない事でしょう?
大人になるにつれて色々な人と出会って、私達も変わって行ったじゃないの。そうふと思った瞬間、私も忘れていなかったのだと気づく。
あの幼き頃にした約束を……。
’うん。菫絶対に潤と結婚する’
小さかったけれど、えらく真剣だった。そしてあの頃の想いは未だにどこか燻ぶったままで…。
ゆっくりとほどかれた手。何も返事をする事が出来ないまま、逃げるように部屋にこもってしまった。扉を閉めて、自分の胸に手を充てると、ドキドキと心臓が波打っているのが分かる。
潤が言う好きって、どんな好きなの?
あなたが私を好きだと言うのならば私だってあなたが好きなのよ。それは当然幼馴染として…。ずっとずっと自分の中でそう思って、納得をさせてきた。
だって私だけあの小さな頃の約束を覚えているのだとしたら、それはとても切ないし惨めだ。