いやいやあんたまで何で乗り気なんだよ。…菫にはその気なんてないのに。
そう考えた後、ふと自分はどうなんだと考えた。
俺は菫が好きだ。…それは幼馴染としてだったはず。けれど菫と一緒に過ごす時間はまるで昔を取り返すようで、楽しい。
菫が結婚するのならばウェディングドレスは自分が作ろうとも考えていた。それに小さい頃の約束も忘れていない。
けれどそれは俺の勝手な我儘であって、菫の気持ちは知らない。
かーちゃんはすっかりと上機嫌になり不安は消えたようだ。
けれど、俺の中ではモヤモヤが残ったままだった。
…菫、大倉に連れ去られたりしないだろうか…。あいつはなんだかんだ押しに弱いんだ。家に連れ込まれたらどうしよう。
結婚しても他の女とも付き合っていたいというような遊び人の男だ。何が起こるか分からない。
そんな俺の心配を他所に、かーちゃんを病院に送り届けて急いで家に帰ってきたら、菫はとっくに帰宅していた。
「あら、早かったのね」
菫はソファーに座り、借りてきたであろう映画を見ていた。
「いや、それはこっちの台詞だ……」
観ていた映画は’アラジン’だった。それも子供の頃に見ていたアニメの映画ではない。昨年公開されたばかりの、実写の映画だった。
ホールニューワールドを口ずさみ、菫は何だかご機嫌そうだった。