「いやいや~本当は舞に側にいてもらいたいんだろーけど、あいつはなんせ海外にいるからね。やっぱりこういう時は娘に居て貰う方が心強いって事でしょー。」

「そうね、やっぱり女の子の方が心強いわ。うちなんて大地は全然帰ってこないのだもの」

「大地は自由奔放だからなー」

「えぇ、あの子は自分の意思もしっかり持っていて、昔から我儘な子だったから心配はしていないのよ。
心配なのは菫の方……あの子は昔から自分を持っているようで…実はお父さんに全部従ってきたような子だったから。
菫はいつも私達親の事ばかり考えて、篠崎リゾートの事ばかり考えてくれるような優しい子だった。逆にそれが不安だったのよ…」

菫もおばちゃんの事を心配していた。けれど意外にも元気そうだった。それを見て少しだけ安心した。菫が居なくなった事に傷心してしまって目も当てられない程落ち込んでいたらどうしようかと思った。

そしていつも旦那の顔色を伺いながら微笑みを絶やさなかったこの人が、きちんと娘の事を見ていたのも意外だった。

おばちゃんの優しい眼差しを前に、どうしようもない罪悪感が襲う。

…本当の事を言うべきなのでは…。と。菫が家を出た事、きっと苦しんでいるに違いないんだ。しかしそのおばちゃんが意外な事を口にしたのだ。

「ところで、菫は元気?」

思わずその場ですッ転びそうになった。

な、何で知っている。と口をパクパクさせておばちゃんを見つめると、またおばちゃんは小さく笑った。