「ねぇ、桃奈さん。」
「…誰ですか。」
「…その言い方は辛いから勘弁してください。」
フンッと私はれいちゃんとは反対の方をむいて、
「桃奈さん、話しよ。」
という言葉を無視する。
綾は私たちに挟まれてニヤニヤしてる。
「呼んでるけど。行ったら?」
岸の方で茉由ちゃんがれいちゃんを呼んでる。
「桃奈さん」
「…知らない。」
「あー…もう、」
少しイライラが含んだ声が聞こえて、
肩を揺らす。
嫌われてたくはないけど、
でも嫌なものは嫌なんだもん。
「え、んんっ…なっ!!」
「やっとこっち向いた。」
無理やりれいちゃんに顎を掴まれてれいちゃんの方をむかされたと思ったら、
れいちゃんの顔がぼやけるくらい近くにあって、
文句を言おうとした口をもう一度塞がれる。
「なっ、なっなんで!れいちゃんのバカっアホっんん…」
訳がわからない状態にパニックになってると、
「桃奈さん場所変えよ。姉貴の視線がうざい。」
「誰のせいよ、桃奈泣かせたら締めるわよ。」
綾とれいちゃんのやりとりに反応する間もなく、
手を引かれて人が少ない砂浜の端っこあたりに連れてこられる。