「ナイスキャッチ〜〜〜っっ!!」


どこからか現れた少年。


いかにもスポーツ少年って雰囲気のその人の手には、さっき私が忘れようとした『カコ』が握られている。


「よかったな!俺がキャッチして!」


「あ、ありがとう…。」


まさか、とって欲しくなかったとは言えず、咄嗟にお礼を言う。


「それ、大事なもんなんだろ?」


「え…?」


「顔見りゃわかるって!お前泣きそうな顔してたぞ?諦めたらそこで終わりっていうじゃん。追いかけたら取れんのに〜!」


何かを見透かされそうな無邪気な笑顔が私には怖かった。


泣きそうな顔なんかしてない。
あんたになんか分かってたまるか。


何より…

『諦めたらそこで終わり』

その言葉だけは、聞きたくない。


私がどれだけの思いでいたのかなんて、
あんたには分からないくせに。


分かったように言わないで…。