その時だった。
強い風が吹いて体が飛ばされそうになって…
「 ヒャッ…」
カバンに結んでいた古ぼけた赤いリボンが宙を舞った。
「あ…!」
とりに行こうという思いを必死に堪える。
もう、あれに縛られてはいけない。
もういい加減、過去のことにしなければいけない。
今がちょうど、そのいい機会になった。
そう思おう。
忘れよう。
輝かしいあの時。
一番笑顔になれたあの時。
あの喜びの瞬間を。
いい加減きちんと向き合わなければならない。
もう、私はあの風を味わうことができないのだと。
もう二度とあれを繋ぐことはできないのだと。
これで
よかった……。