あたり一面を覆うピンクの花びら。


地面に落ちて踏まれてしまったその薄汚れた色は、どこか私の心の中を表しているよう。


もう4月半ばだというのに、まだその花を見ることができるとは思ってもみなかった。


｢あんたも私と一緒ね。｣


今年は少し遅れて咲いたその花に自分を重ねる。


実際は、木々がピンクでいっぱいに染まる満開の時が綺麗だと言われるのだろうけれど、私には散ってしまったあとの方が親しみが湧く。


華やか過ぎるのは…
私には、眩しすぎるから。


｢もう帰りたいな。｣


朝から気分は憂鬱。
新しい制服を身にまとい、新しく始まる生活に心弾ませるべきなのだろうけれど…。


そのスタートから出遅れてしまったんだから。


「はぁ…。」


私の思いを嘲笑うかのように、風に吹かれた桜の木はカサカサと葉を揺らす。