少しの間をあけて、さっきまで馬鹿みたいなことを言っていたのに、突然真面目な声を出す。

「ねえ、葵。前に、幼馴染の関係を壊したのは、お互いだからって言ったよな。」

「…え、えぇ。」
「それって、俺の20歳の誕生日のとき、だよな。」
「な、に...」
「もしかして俺、そのときに、葵と寝た?」
「…っ、え…」

予想外の問いに、言葉が詰まる。

返答はできていなかったが、その言い方でおそらく察したんだろう。

押さえられていた体はゆっくり離れていき、蒼はベッドに座りこんだ。

「昨日、葵を抱くのは初めてのはずなのに、触れた感覚を知ってる気がして。葵とそんなことになった記憶はないけど、一度だけあったとしたら…俺が初めて酒を飲んで記憶をなくすほど酔ったとき、だよな。」

蒼が思い出すことは想定外だったけれど、今はもう何も問題ない。

だから、本当のことを話しておくべきなのだろう。


ベッドからゆっくり起き上がり、前をシーツで隠しながら蒼に向き合った。


「…そうよ。あの日、私は蒼と寝た。」

「だよな、ごめ―――」
「でも、あれは私も合意の上だから。蒼は悪くない。」
「葵…。」
「蒼は私に聞いてくれた。その上で私が良いと言ったんだから、蒼が謝ることは何も無いの。」

小さく、うん、と返事をしたけれど、蒼の顔はまだ不安そうに。

「でも、あれからずっと葵にだけ背負わせてて、起きたらあんなこと言われて。そりゃあ俺のこと嫌いになっても当然だなって…ごめん。」

いつの間にか大きくなった蒼の背中も、こうして後ろから見ていたら小さい頃の落ち込んでいる頃と全く変わりがなくて、そうくんのままだった。
それなら、と、後ろからそうの背中に抱き着いた。

「あ、あおい?」



「あおいを助けられるのは、そうくんだけだから。これからもずっとたすけてね。」



驚いた蒼に私からキスをした。

それから、君はこう返してくれるんでしょう。



「もちろん。ずっと、あおいちゃんのそばにいるよ。」
私たちの間にあるのは、壊された距離0センチ―――