「な、なに、急に。」

持っていたグラスを落としそうになって、慌ててテーブルの上に置いた。

「今さら、蒼に謝られることなんてないんだけど。」
「葵が突然、俺の前からいなくなるくらい俺に会いたくなかったことは分かってる。それだけ嫌われてるなら、葵のことを諦めるべきなんだとも思った。」

でも、と彼は下を向きながら呟く。

「諦められなかった、忘れられなかった。葵がそばにいないことに、耐えられなかった。」

そして、聞き取れないほどの掠れた声で彼は言った。



「葵が、好きなんだよ。」
「…え…?」


ずっと聞きたかった、一言。今それを聞けたはずなのに。

ここまで会いに来てくれた蒼は、私のことを好きでいてくれた…?

いや、違う、自惚れてはいけない。彼のその言葉は、“幼馴染として”という意味なのだから。

…やっぱり、蒼は、蒼だ。
ずっと変わらない、私を“幼馴染として”大切に思ってきた、そんな人だ。