そう言って入って来たのは幸野さん。私は顔を上げる。幸野さんと目があった刹那、「大丈夫だよ」と優しげに微笑まれた。

「村橋さん、白いご飯がいつも入っている器を開けてみてください」

村橋さんに幸野さんは言う。村橋さんと私は首を傾げる。どうして幸野さんはそんなことを言うんだろう……。

「あれ?この中身、ご飯じゃなくてそうめん!?」

村橋さんの驚いた声に私も器を覗き込む。ご飯が入っているはずの器には確かにそうめんが……。

「ちゃんとそうめんになっています。この子は何も悪くありません」

幸野さんがそう言い、村橋さんは謝ってくれた。私はホッとしながら病室を出る。

「幸野さん、ありがとうございました」

「いいよ。好きな子が責められてて辛かったから……」

私がお礼を言うと、幸野さんはまた優しく笑う。ああ、もう止まらない。

「ダメですね、私……。一人前にまだ全然なれていないのに、こんなにも幸野さんにドキドキしています」

「えっ!?それって……」

幸野さんの顔が赤く染まる。もちろん私の顔も……。

「今日、帰りにどこかでお茶しませんか?」

私がそう微笑むと、幸野さんは「もちろん!」と嬉しそうに笑ってくれた。