普通なら、これで私は部屋を出て行くんだけど、「ちょっと待って」と村橋さんに声をかけられた。何やら怒っている声だ。

「はい、どうされましたか?」

私が振り向くと、村橋さんはまだ手のつけられていない昼食を指差して言う。

「私、昼食はそうめんがいいって頼んだんだけど。朝もそう看護師さんに言ったよ」

「えっ!?」

突然言われたことに私は戸惑う。そんなこと一度も看護師さんから聞いていない。どうしよう、どうしようと考えている間にも村橋さんは文句を言ってくる。

「これご飯でしょ。ご飯なんだったら食べる気しないわ。持って帰って」

「えっ!?そ、そう言われましても……」

「あなたもここの職員でしょ。何で情報を共有してないんですか?」

「す、すみません。まだ入ったばかりでして……」

頭が真っ白になっていく。村橋さんに何を言えばいいのかわからず、うつむいてしまう。泣き出してしまいそうになったその時、ガラリとドアが開いた。

「お話は全部聞かせていただきました」