視線を感じるって怖いって思う人もいるかもしれない。でも、幸野さんの視線はとても優しくて何だか温かい。触れられた時のことを思い出してしまう。

「花見さん、ちょっといい？」

「は、はい！！何ですか！？」

先輩に声をかけられ、私は慌てて返事をする。大きな声が出てしまった。恥ずかしい……。

「えっとね、一人CTに呼ばれたから連れて行ってほしいんだ」

「わ、わかりました！」

私は患者さんを検査に連れて行くため、ナースステーションを離れる。離れると仕事という空気が戻ってきた。久しぶりに幸野さんと同じ空間にいると変な感じ……。これって絶対……。

でも、患者さんをCTに連れて行った後は幸野さんのことを考えている間もないほど忙しくなってしまった。

患者さんの検査の付き添いをまた頼まれ、薬剤室に薬を取ってくるよう頼まれ、患者さんのテレビカードやお茶を買いに行き、退院した人のベッドのシーツ交換をしてーーー。

「花見さん、お昼休憩行っておいで。お昼の食事介助しなくちゃいけないし……」