「……って、どういうこと?」


「あらま」


予想外という顔をされた


いや、私もこの展開は予想外だった


「だって、中2の時、二人で祐のこと、話してたじゃん!養子縁組の書類もあったし……」


「確かに、話してた。よく知ってるな」


お父さんが感心したように言った


「養子縁組の書類はね、書くだけ書いて、役所には出してないのよ」


「……えぇ?!」


出してないの?!


じゃあ、私と祐は……


「だから、最初っから、兄妹なんかじゃないのよ」


笑いながら、お母さんは言った


いや、笑い事じゃないし


「なんで、もっと早くに言ってくれなかったのよ」


「だって、知ってるだなんて思わなくて。元々教えてなかったし、言わなくてもいっかなって」


相変わらず、楽しそうにお母さんはしゃべっている


「でも、なんで祐を養子にしなかったの?色々調べたけど、18歳未満の子どもは、親戚の人と暮らすか、養子として暮らしていかなくちゃいけないんでしょ?」


「それがね~、案外ばれないものなのよ」


それもそれですごい……


「この家の養子じゃないから、祐くんの名字は前と変わらないし、住所も祐くんが昔住んでいた家の住所だし」


「えっ?でも、あの家、誰も住んでいないんじゃ……」


「契約は、ずっと続いているの。祐くんが、どうしても養子にだけはなりたくないって言うもんだから」


「……なんで?」


私は、祐に聞いてみた


「養子ってことは、俺のこと、本当の子どもじゃなくても、自分の子どもとして育てていかなきゃいけなくなるでしょ?迷惑かけたくなかったんだ。それに……」


祐は、まっすぐ私の方を向いた


「美音と兄妹って関係になりたくなかったから」