街の人が近づいてくる。ロネは不思議と恐怖を感じたりはしなかった。ただ冷静に相手を見つめる。

「話を聞いてください。ゾーイは確かにメルガの娘です。しかし、彼女は何も悪いことはしていません。あなた方が騙されているんです」

ロネはそう言い、真剣な目で街の人たちを見つめる。しかし、街の人たちの顔色は変わることはなかった。

「ガキは引っ込んでろ！」

「あの女の娘を殺さないと俺たちが死ぬ！！」

街ではあの事件での恐怖があるのだ。ロネは慌てて口を開く。

「それはゾーイの仕業じゃない！ユミル・イェーガーという人狼の仕業で……！！」

しかし、街の人たちの殺気は高まっていくばかりだ。仕方なくロネは杖を街の人たちに向ける。

「ごめんなさい」

そう言い、ロネは魔法を街の人たちにかける。すると街の人たちは眠ってしまった。もう一度ロネが魔法をかけると街の人たちは操り人形のようにフラフラと動き出し、森から出て行く。ロネはため息をつき、ほうきにまた跨った。