ゾーイがうつむきながら訊ねる。自分がメルガ・キースの娘だからだ。ロネは「ゾーイ」と彼女を呼びながらゾーイの手を包む。

「前にも言ったでしょ？俺はゾーイが好き。誰かを愛することは自由だよ。ゾーイと付き合っちゃいけないなんて法律、この世界のどこにも存在しない。俺は何があってもゾーイといたい！」

ロネがそう言うと、ゾーイは泣き出しそうな顔をする。ロネがそっとゾーイの頰に触れるとゾーイの瞳から涙がこぼれた。

「私も、ロネといたい。……愛してる」

「俺も愛してる」

ロネとゾーイはゆっくりと顔を近づけていく。そのまま唇を重ねてしまいたかったのだ。しかし、それは二人の人物によって邪魔されることになる。

「二人とも、無事だったか！？」

「ロネ、アテナ！！」

カフェに二人の人物が飛び込んできた。勇者の息子であるネイサン・サミュエルとセイレーンのハーフであるナタリー・スカイラーだ。二人は慌てて離れる。