ユミルが笑い続ける中、ロネは「そ、そんなこと……」と声を震わせる。認めたくなかった。ゾーイは、自分の母を殺した人狼に育てられていたのだ。

「あたしの言っていることは本当さ。あの女は馬鹿みたいに最期まで叫んでいたな。「ゾーイ!!ゾーイ!!ゾーイ!!」って」

ユミルがそう言い馬鹿にしたような目をゾーイに向ける。ただ目を見開いていたゾーイの体の震えが止まった。そして、その顔は憎しみに満ちていく。

「お前が……お前が……私の母を……」

「ああ。お前は武器になるのに優れていた。しかし、ジャスミン・テイラーはお前に優しさを教えた。それは武器にとって不必要なもの。だから邪魔者は排除した」

あまりにも身勝手すぎる理由にロネの中にも怒りが生まれる。しかし、ジャスミンと過ごしたゾーイはもっと苦しい思いをしているのだろう。

赤いガーネットやルビーのような瞳は、まるで地獄で燃え盛る炎のようにゾーイの怒りや悲しみを映し出していた。