1年前───。
「あの、私、小林茜と申します。」
「茜ちゃんかぁ、可愛いね。どうしたの?」
「好き、です。私と付き合ってください。」
「ん、いいよ〜」
「ですよね。いいよなんて────えっ?」
いいの?
ほんとに?
「僕、いいよって言ったのに、そんなに嬉しくない?」
「いや、嬉しいです。私、付き合えるって思ってなくて…」
るい君は女の子を取っかえ引っ変えする事で有名だ。
来る者拒まず、去るもの追わずで、女の子の告白はあまり断らないらしい。
るい君は高身長で鼻はシュッとして高い、本当にイケメン。
でも少しタレ目なのがギャップ萌えなんだよね。
断らないとは聞いていたものの、返事がOKだった事が嬉しくて仕方がない。
「こんな可愛い子なら大歓迎だよ」
「じゃあ私はるい君の彼女…?」
「うん、そうだよ?」
昇天してしまいそう。
「で、では私はこれでっ」
「あ、待って。一つだけ条件があるんだ」
「っ何でしょう?」
「付き合ってる事は周りには内緒ね。それが守れるならずっと付き合ってあげるよ」
*
今でもわからない。
何で私と付き合ったことを秘密にしたかったんだろう。
僕はずっとモヤモヤしていた。
誰、“浦くん”って。
「るいくーん、何かイライラしてない?」
「なになに、何か嫌なことあった?」
よく僕に話しかけてくる女の子達が寄ってきた。
「うーん、ちょっとね」
うるさいから、近づかないで。
「あれー?また君たちるいの所に来たの?」
幼なじみの翼が僕に話しかけてきた女の子達に絡み始めた。
多分、助けに入ってきてくれたんだろう。
「せっかく来てもらったのに申し訳ないけど、今のるいには話しかけない方がいいよー。怒らせると怖いからね。よし、僕といい事しちゃおっか?」
「えー、るいくんがいいのに〜」
「また来るね、るいくん」
女の子達はへそを曲げて教室を出て行った。
「なになに、るい君よぉー。何でまたそんなにイライラしてるの」
「うるさいなぁ翼」
「あ、もしかして愛しの茜ちゃんの事かな?」
「ねぇ、名前で呼ばないでよ」
僕以外のヤツが呼んでいいと思ってんの?
「はいはい、ごめんって。で、どうしたのよ」
「茜ちゃん、浦ってヤツにノート貸すって言ってた」
「あぁ、浦ってサッカー部のエースじゃん。アイツはフレンドリーだから小林ちゃんとも仲良くなったのかもね」
ムカつく。
「それに誰にでも優しいから小林ちゃんもそっちに行っちゃうかもね」
絶対そんな事させない。
「小林ちゃん結構モテるから、良い男が出てきたらるいなんてポイされちゃうかもね」
「そんなやつ出てきたら抹殺する」
「おー、怖い怖い」
茜ちゃんは僕以外の男と話すことなんてなかった。
むしろ、僕の事を落とそうと必死だった。
それが可愛くて仕方なくて、茜ちゃんが欲しい言葉もあげられずにいた。
「るいがヤキモチ妬くなんて初めてなんじゃない?」
「いや、そんな事ない」
あの夏祭りの時だ。
でもこんなに心を抉(エグ)られる事なんて今までなかった。
夏祭りの時より痛い。
僕は茜ちゃんと付き合ってるけど女の子と話すことは結構多い。
もちろん、セフレはいなくなったけど。
もしかしたら茜ちゃんもこんな気持ちになってたのかな。
「いつからそんなに小林ちゃんの事好きになったんだよ」
「あぁ、それは内緒」
絶対言わない。
「ケチだな〜。ま、早いとこ茜ちゃんに気持ち伝えてあげなよ」
「言われなくてもわかってるし」
僕が、茜ちゃんに落ちたなって思ったのは去年の夏祭りのこと。
付き合って3ヶ月ぐらいの時、茜ちゃんにお祭りに行こうって誘われた。