音トキ
喧嘩。



トキヤの小言にもう耐えられない
トキヤの言い方がきつくて時々泣きそうになる。


「ねぇ?そんな言い方ないんじゃない?」

「それはどういう意味ですか?なにか私は間違ったこと言ってますか?」


きっかけはいつもみたく些細なことだと思う。
俺の帰りが遅いとかだらしないとか仕事きちんとこなせとか…
いろいろ言われて小さく積み重なったものが爆発した感じかな。


「俺…そんなにきつく言われなきゃダメなの…」

「あなたが最初からきちんとしてればいい事なのではないですか?」

「……。」

「なんで黙るですか?当然のことを言ったまでですよ?」

「もう…無理…」

「はぁ?あなたには自覚が無さすぎます。そんな人はアイドルになる資格なんてありませんよ!芸能界舐めないでください」


ぷっつーん。そんなこと言う?ひどすぎる…
俺は耐えられなくなって扉をきつく閉め部屋を出た。



トキヤside


またやってしまった…
音也のことになると私は思考が低下するみたい。


「なんであんなこと言ってしまったんだろ…」


私は深く後悔した。
彼に言ってはならないことを言ってしまった。
まぁ彼のことですし、いつもみたくそのうち帰ってくるでしょ。

だけど朝になっても彼は帰ってきませんでした。

どこいったんです?なにをしてるんですか…
謝りますから…いや、謝らせてください


「おぉトキヤ。おはよ。」

「おはようございますトキヤくん!」

「翔、四ノ宮さん。おはようございます。」

「あれ?音也のやつは?まだ寝てんのか?」


翔たちに心配させる訳には行かないと思い私は咄嗟に嘘をついた。


「いえ、音也なら朝からどこかに出かけたみたいですよ?」

「まじかよ。あいつとサッカーする約束してたのにな。」

「仕方ないですよ。音也くんにも予定はできますよ」


なんとか彼らに気づかれることはなかった。


「……。」

「どうしましたか?浮かない顔してますよ?」

「そういや、いつものトキヤの感じではねぇな。なんかあったのか?」

「いえ、なんでもありませんよ。私仕事なのでそろそろ行きますね。」


私はそそくさと翔たちと離れた。



音也side


俺は行くあてなんてないのになにしてんだろ…
とりあえず俺はおばさんの墓地に来ていた。


「ここ…懐かしいな…」

「おばさん見てる?俺またトキヤに悪いことしちゃったみたい」

「俺…ダメダメだな…トキヤに迷惑しかかけてない…」


自然と涙がポロポロとでてきた。


「俺…どうしたらいいのかな…アイドルやめたらいいのかな…」

「ははは。こんなことばっかり言ってちゃダメだね。そろそろ帰るね。話聞いてくれてありがとう」


俺は墓地を離れ目的もなく歩くことにした。
横断歩道を渡りきったくらいで後ろの方から走ってくる女の子がいた。
タイミングが悪く近くにはスマホをいじりながら運転しているトラックが近づいてきた。俺は何も考えずに女の子を突き飛ばした。

俺の体は吹っ飛んでった。意識が朦朧とした中で周りがざわついてるのと自分が血だらけなのがわかった。だけど自然と後悔なんてしてなかった。

彼女を助けることが出来て俺は安心したんだ。



トキヤside


今日は帰ってきますよね。
彼の好きなカレーでも作って待ってますか。

スーパーによりカレーの具材を買った。

寮に着くと何故かざわついていた。


「トキヤくん!!!!」

「イッチー!」


音也を覗いたメンバーがそこに集まっていた


「どうしたんですか?そんなに慌てて」

「む、一ノ瀬は知らんのか…?」

「え、なんのことですか?」

「音也が…交通事故にあったらしい…」


え…何を言ってるんですか?そんな冗談通じるわけないでしょ


「何言ってるんですか?冗談はやめてください。私は仕事終わりで疲れてるんです。」

「イッチー…ほんとに知らかったんだね…」


ほんとに音也が?音也が…そんなことあるわけがないでしょ!?


「嘘ですよね…どうして…どうして音也が…」

「轢かれそうになっていた女の子をかばったみたいなんです。一ノ瀬さんに連絡しなかったことは申し訳ありません。お仕事中だったとお聞きしたので…」

「いえ…いいんですよ…」

「とりあえず今から行けるメンバーで病院に行こうと思ってるんだ。」

「一ノ瀬はどうする?休んでおるか?」


そんなの…そんなの!


「行くに決まってます!早く行きましょう」


病院についてからすぐに音也のところへ向かったがチューブで包帯ぐるぐる巻の音也の無残な姿はとても見ていられるものではなかった。


「音也…起きてください…目を覚ましてください…」

「一ノ瀬…一十木なら大丈夫だ。あいつなら目を覚ます」

「イッキは大丈夫さ。イッチーが信じてあげないでどうするのさ」

「そんな…こんなことになったのは私のせいなんです…」

「どういうことだい?」

「昨晩、音也と喧嘩しました。アイドルになる資格なんてないってつい言ってしまって…それで彼は耐えられなくなったんでしょう、部屋から出ていき今朝も帰ってきませんでした。喧嘩したままなんです…」

「そんなことがあったとはな」

「イッキも頭冷やそうと思ったんだろうね」

「いえ…私の責任です…あんなこと言わなければ…音也はこんなことには…」


すると医師が私たちの元へ。
医師から告げられたものは運ばれてきた彼の状態は非常に危なかったと。あと1ヶ月で目を覚まさなければそういう事だと思ってくれと。

どうして音也がこんなことにならなきゃならないですか…音也を…私たちの音也を返してください…

メンバーや七海さんは一旦帰ると言っていたが私は帰るなんて選択肢はなかった。


「それでは一ノ瀬さん。一十木くんをお願いします。」


みなさん帰っていった。
私は音也に話しかけた。


「音也。昨日ぶりですね。昨日のこと謝りたいんです。なのて早く目を覚ましてください。」

「音也…音也…」


彼がいてくれた時間がどれだけ大切なのかが思い知らされた。私はボロボロの音也を見て涙が止まらなかった…


「ごめんなさい…音也…ごめんなさい…」

「あなたがいないと困ります。私だけではなくみなさんが困ってしまいます。」


アイドルになる資格なんてないなんて…なんてことを言ったことをほんとに後悔しましたよ…


「音也…私の音也…」


音也side


ここはどこ…
真っ暗だ…

光を探すために歩き出したが見つからない


「ここはどこ…」

「音也」

「っ…おばさん…!」


俺は思わず抱きついてしまった…


「おばさんごめんなさい…俺…俺…」

「何言ってるの。音也は何も悪くないじゃないの」

「だって…だって…」


俺は涙が止まらなかった


「音也。あなたは色んな人に愛されてるのね。安心したわ」

「おばさん…?」

「ほら、音也にも聞こえるでしょ?」

「音也…目を覚ましてください…」


トキヤ…?
俺のこと怒ってるんじゃないの?呆れてるんじゃないの?


「今のあなたはまだこっちの世界に来ちゃダメ。」

「でも…俺迷惑かけるだけで…何も出来ない…」

「何を言ってるのよ…あなたを必要としてくれてる人が沢山いるじゃないの…」


俺…あっちの世界に戻っていいの…
俺はいてもいいの…トキヤ…みんな…


「戻りなさい音也!」

「うん…また頑張ってみるよ…」

「もうここに来るんじゃないよ?あなたの居場所はあっちなんだからね?」

「うん。もう心配かけない…」

「いい子ね。さぁ音也。あそこの光が出口みたい。早く行きなさいな」

「おばさん…ありがとう…俺を育ててくれて!」

「うん!いい笑顔ね音也。さすが私の音也ね」


俺はもう振り返らない。何があっても強く耐えるんだ!



トキヤside


「……」

私はどうやら寝てしまったようだ…

音也の手は子供体温ですごくあったかい…


「ト……ヤ……」


ん?なにか聞こえたような…

、っっっ!


「音也!目が覚めたのですね!?今看護師を呼んできます!」


音也が目を覚ました。