だって昔は女遊びが激しかったと。
だからこういうものだって、彼からしたら日常茶飯事だったのかもしれない。
「う、わわ…」
「ったく、いい加減慣れろ。それじゃあこの先苦労するぞ」
「こ、この…先……」
「待て、気絶はやめろ。誰が毎回抱えて帰ると思ってんだ」
私はふと、たまに思ってしまう。
一番彼に相応しくない人間だったんじゃないかなって。
家族が居ないからとか孤児だからとか、そんなことじゃない。
今の私はそんなふうに自分を卑下しないくらいには成長している。
「おい梓。……当分戻って来ねえなこれ」
そうじゃなくって、彼にはもっと大人の女性の方が良かったんじゃないかって。
私なんかじゃ満足させられないんじゃないかって。
さっきも妹だと間違われたくらい、夫婦には見られてない。
それは百も承知のこと。
「これも惚れた弱味か。…こんなに待ってんのは初めてだ」
だって土方さん、格好いいから。
私は正直つり合っていない。
世の中ではこういうことは贅沢病だと言われるが、本当にそうだと思う。
幸せで、幸せすぎるのだ。
どうして彼は私を選んでくれたのだろうって、こうして肩を並べる度に思ってしまう。