「ったく、もう男になろうとしなくていいっつっただろうが」


「うん…」


「にしても斎藤がまさか所帯持ってるとはな。驚くことばかりだ」



警官になって、武士とはまた違った形にもなっていて。

だけど誠は確かに彼等の中にあるのだ。

新撰組として生きた証は、それぞれの心に残っている。



「わっ…!」



ぐいっと腕を引かれ、そのまま流れるままポスンと彼の膝の上。

ぎゅっと抱きしめられたことで密着した髪が額に触れた。



「町に行くか。海の方にも行きてえっつってただろ」


「…うん」


「…っても、離せねえんだがな」



ぎゅっと握りしめているのは土方さんもだけど、私だってそうだ。

昔を思い出すとこうして違う形になった今が何よりも愛しく思えてくる。



「んっ…、ん、」



ちゅっと軽い口づけが何度か弾けた。



「…江戸の姉貴から、また顔出せって文がきてた」


「……行きたくない」


「まぁそう言ってやるなよ。あいつらはああいう部族だとでも思っとけ」



それは春のことだった。

土方さんが戻ってきてから初めて迎えた春、私は船に乗って彼と一緒に江戸へ向かった。