唇が合わせられたか、押し倒されたか。
どちらが早かったかすら不明だ。
布団の上ですらない場所に仰向け状態となっていて、そこに屋根をするみたく被さってくる。
「んっ…、土方さん…、」
「歳三」
「としぞう…」
「おい呼び捨てかよ」
ちゅっ、ちゅっと響く甘い音は外の豪雨なんか考えられないくらいだ。
───ドンドンッ!
そんなときだった。
明らかに雷の音ではない振動が戸を叩いている。
動物か、盗賊か。
こんな豪雨の夜に来るなんて。
「土方さん…」
「いいか、俺の合図で動け」
「は、はい…」
その目付きはかつてのものに変わる。
スッと立ち上がった彼は1度場所を離れ、再び現れたときには腰に刀を差していた。
そのまま戸に張り付くように移動し、私に視線で「引け」と送った。
私が寝室へと足音を立てずに逃げたと同時、彼はスススッとゆっくり戸をずらす。
「……誰だてめえ」
「た、助けてください…」