誰からだろう?
この町で知り合った同い年の女の子とは、こうして文通をするほど仲良しなわけではなかった。
商店街で会えば他愛もないお話をする程度で。
「………あ!」
「心当たりあんのか」
「うん、あのね、前に川縁で草履の鼻緒が切れちゃったお爺さんがいたの」
ちょうど買い物帰りだったこともあり、困っている人は放っておけない性分から手助けをしてあげたことがあった。
鼻緒を結んであげて、途中まで荷物を持ってあげたっけ…。
「きっとその人かも…。でもどうしてここの住所知ってたのかな…、名前も教えてないのに」
「間者じゃねえだろうな」
「…たぶんそれはないと思う、けど」
副長が顔を出した。
この場所は戦というものから離れた地だったとしても、彼は名のある指揮官だったのだ。
そういう危険も付き物。
それでもあのお爺さんが間者だとはどうしても思えない。
「読み上げてみろ」
「う、うん」