「…てめえは嫌じゃねえのか」



文机に向き合っていた彼は、ようやく振り返ってくれた。

「こんなのいつものことだから」なんて言ってしまったのが間違いだったか。


「そうか」と、少し落とされた声。



「土方さん…煙管吸う?」


「…昔少し吸ったことあるが、俺には合わなかった」


「じゃあこれは使えないね…」



なにか他の使い道はないかなぁ。
これ、かなり上質な素材で作られてるものだ。

そんなふうに会話をどうにか逸らしていなければやってられなかった。


…嫌に決まってる。


昔は「やっぱり土方さんは凄いなぁ」なんて、子供だったからこそ憧れの方が大きかった。

でも今は、全然違う感情なのだ。



「…おい、これ俺宛じゃねえぞ」



一応大切な文も混ざっているかもしれない。

一通一通確認していた土方さんは、1枚の封を差し出してきた。


そこには“土方梓 様”と、太くも細くもない字で書かれている。



「え、……私…知り合いなんか居ないよ」


「大鳥さんか鉄之助辺りじゃねえのか」


「でもそうだとしたら土方さん伝いで来ると思うし…」