「お父さんがね、ありがとうって笑ってたよ」
目を閉じると見えるんだよ。
いつも笑ってくれてるの───。
梓は嬉しそうに微笑んだ。
「…そうか」
「それとね、」
俺の言葉が近藤さんに伝わってくれたのか?
そうでもそうじゃなくても、こんな月の綺麗な夜なんだ。
少しばかり期待したっていいだろう。
「私は…土方さんがついて来いって言ったから追いかけたんじゃないんだよ」
ゆっくりと、その唇は音を発した。
その声はこんな夜には心地が良い。
「私がそうしたかったから。…私は今までだって、案外自分の意思で動いてるの」
あぁ、わかってる。
こいつは意外と俺にバシッと言うところがある。
俺の背中を押すのだ。
だから俺だってお前を離したくなかったんだ。
「私は土方さんを初めて見たときから───…土方さんだけは特別だったと思う」
たくさん怒られたのも土方さん。
たくさん泣かされたのも土方さん。
初めて恋をしたのも、土方さん。
初めてをたくさんくれたのは土方さん───。