『寂しいってなぁに───?』
いつも思い出すのはそんな言葉。
瞳の中にある哀しみ、なにも知らない赤子のような子供。
『親は…ずっと居ない』
『要らない赤ちゃんを郵便物みたいに届ける場所があるの』
『私の親は私をそこに投函したんだって』
あの時はまさかそんなガキを俺がその先ずっと傍に置くことになるなんて、俺ですら思ってなかった。
目を閉じればいつだって記憶は甦る。
『土方さん!』
感情表現の薄かったそいつが。
日に日に笑うようになって、泣くようになって。
俺を懸命に追いかけて来るようになって。
「…離せなかったんだな、俺が」
離さなかったんじゃない。
こいつが離れなかったんじゃない。
俺が梓を離せなかったのだ。
「───…あれ…私、寝ちゃった…?」
「布団行くか?」
「…ううん、まだいい。あのね歳三さん」
猫が頬を擦り寄せてくるように、俺へと笑いかけた梓。
思わずその肩に腕を回す。