『俺はもう十分だよ。トシの人生は俺のじゃない』
『トシ、梓を頼んだ』
『お前は俺の最高の親友だ』
あんたに託された命を守る為なら、なんだって出来た。
俺が戦で死んだとしてもこいつだけは絶対に守り通すと。
だけど結局は、こいつに助けられちまったんだ。
「俺は貰ってばかりだな…」
なぁ、近藤さん。
俺はよ、やっぱりずっとどこかに罪悪感があったんだ。
総司にだって俺の為に死んでいった仲間達にだって。
俺だけがこうして平凡に暮らせていることに、自分でも許せない部分があった。
「それでも梓だけは…幸せにしてやりてえんだ」
こいつは俺達新撰組そのものだろう。
俺達の誠だろう。
「───っつうのは俺の最大の自己満足なんだろうな」
『いいや、そんなことはないさ』
風の頼りがそう言ってくれてるみたいだった。
隣には月を眺める存在がもう1人居るように感じてしまう。
『お前の言うとおりだよ、トシ。梓が居てくれれば俺達も生きてるんだ。そんな梓をお前が守ってくれている。
これ程に喜ばしいことがあるもんか』
罪悪感がスゥッと消えてゆく。
胸につっかえていた思いが、軽くなっていく。