「ありがとう土方さん。私、一生忘れない…」
「…ここまできて“土方さん”はねえだろう」
「と、と、…歳三さん…」
スッと頬に伸びてきた手。
そのまま自然と上を向かされる。
「ここまで俺について来てくれたこと、感謝してる」
初めての言葉だった。
それだけで今が何よりも神聖で神秘的で、特別な空間なんだと実感する。
白無垢衣装ではなく、2人きり。
でも今の私は着物を着てることには変わりなくて、女の子の姿であなたの目の前にいる。
そして私の前には着流し姿の土方さん。
それが何よりの幸せだった。
「お前が居てくれなかったら、俺は今の幸せを手に出来てなかった」
そんなの私もだよ、土方さん。
土方さんが居なかったら全部知らないまま私は死んでいた。
頬を撫でてくれる手はゆっくりと下ろされて、逸らす素振りもなく見つめてくれる。
「───梓、」
その言葉を聞くよりも先に私の瞳からは涙が落ちてしまった。
誤魔化そうにも誤魔化せないから、誤魔化す必要なんてないから。
困ったように笑った彼は優しく口付けを落とす。