「順番が逆になっちまって悪い」
柔らかく笑った彼は真面目に1つ深呼吸をした。
そしてポツポツ説明をし出す。
「俺も昔、兄貴達の祝言に参加しただけで詳しくは覚えてねえが…」
彼が酒を準備したのは“嫁を迎える”立場だからだ。
迎える側としておもてなしの心を大切にするこの時代の風習から。
そしてこの後、順番に1杯の盃に注がれた酒を飲んでいく。
「───これが一応、祝言だな。それでも仲人揃えて白無垢を着てえってんなら近々用意するが」
勢いよくブンブンと首を横に振った。
まさかここまで本当に応えてくれるなんて思っていなかった。
土方さんが、だ。
鬼と呼ばれた程の副長の優しさが嬉しくて涙が出そうだった。
「俺もお前と同じで形にゃ拘らねえからよ、言葉がありゃ十分だと思ってた。
でもお前のその顔が見れるんなら…もっと早く挙げときゃ良かったな」
やっぱり貰ってばかりだ。
いつも私はこの人には貰ってばかり。
そう言えばきっと「そっくりそのまま返す」と、言われてしまうんだろう。