祝言……。

言葉的に祝いものだということくらいは分かる。

そしてそれを私に言ってくるということは、結婚式のようなものなんじゃないかと。



「でも、プロポーズしてくれたから…」



トントンと野菜を切る音がいつもより静かだった。

料理中もずっとぐるぐる頭の中では奥様方から言われた言葉が回ってしまっていた。


祝言はしていない。

だけど、私が欲しい言葉をくれた。



『俺の家族になってください』



正直それだけで十分だった。

そもそも土方さんがまたこうして隣に現れてくれたことが夢みたいだったから。



「それに……」



もう、ぜんぶをあげてしまった。

こればっかりはどうしようもない。


祝言を挙げていなくても特別な関係なんだと、もう体に刻まれてしまっているわけで。



「な、なに考えてるの私…!」



それ以上望むものなんてないはず。

でもこの時代の結婚式というのは何をするんだろう?とも、気になってる私がいた。



「なにかあったのか?今日は随分と静かじゃねえか」


「…なんでもないよ」



「普通だよ」と笑ってみるけれど、余計に沈黙が流れてしまった。

土方さんはいつもより早く夕食を食べ終わると「ご馳走さん」と、手を合わせて。


そして向かい合った私の傍に寄ってくる。