「それにしても昨夜はよく耐えたな。俺ぁてっきり失神でもするかと思ったんだが」


「変なこと言わないで…っ、土方さんのばか…!変態…!」


「…ほう、昨夜あんなに“歳三さん歳三さん”言ってたのはどこのどいつだ」


「土方さんだって“愛してる”っていっぱい言ってたよ…っ」


「───…うるせえ、馬鹿」



この人のこんな顔を見れるのはたぶん私しか居ない。

そして私にこんな顔させるのだって、この人だけだ。


昔から、ずっとそう。

変わらないものがここにある。



「ふふっ、なんかこの掛け合い…前も似たようなことしたね」



蝦夷で、馬鹿って言い合ったとき。



「…あぁ」


「…あのときは私のこと…好きだった…?」



なんて、あのときはまだかな…。

私だって土方さんのことを好きだって気付いたばかりだった。



「…どうだかな」


「…顔、赤くなってる…」


「……言っとくが俺が優しくするのは最初だけだ。2回目以降は好きにさせてもらう」


「なっ、なにそれ…!」



やっぱりこの人は鬼。
それでも、とても不器用で優しい人。


今日お買い物行きたいのに。

すごくいい天気、ぽかぽかしてて暖かいのに。

あぁでも、これからもそんな日はたくさん来るから。


今日はいいかなって。



「梓。てめえは変わらず俺について来い」



目の前の大きな大きな水平線の先が、初めて掴めたような気がした───。