……もしかして……加恋ちゃん……昨日、誰もいない教室で僕と愛美ちゃんが二人だったときの会話を聞いて……。


「だから……優くんは工藤さんと……。その方が優くんは幸せになれるから……」


「加恋ちゃん……?」


「優くん、今までありがとう」


「ちょっと待ってよ、加恋ちゃ……」


「優くん、また明日学校でね」


 加恋ちゃんはそう言うと、僕の手を離して歩き出した。


 ……嫌だ……嫌だよ、そんなの……。


 加恋ちゃん‼


「待ってよ、加恋ちゃん‼」


 僕の呼びかけに加恋ちゃんは立ち止まった。


「加恋ちゃん……なんでそんなこと言うの……?」


「…………」


「なんで愛美ちゃんと一緒にいた方が幸せになると思うの……?」


「…………」


「なんでそんなこと加恋ちゃんが勝手に決めるの?」


「…………」


「……答えてよ……加恋ちゃん……」


「…………」


「……答えてよ‼」


 僕は、そう言って加恋ちゃんのところに歩いていき、加恋ちゃんの正面に立った。


 僕が加恋ちゃんの正面に立ったから、加恋ちゃんは下を向いてしまった。