「佐脇は、一生、蝶々結びができなくてもいいよ」 「なんじゃそりゃ」 すっかり重たそうな靴を足ごと浮かし、足の首を揺らして水滴を幾分か吹き飛ばして。 「来世では完璧だかんな」 私の目に映えた歪んだ弧の中でも、崩れぬ笑顔の佐脇が、てのひらを差し出した。 「見せに来てね」 その温もりと。重ねて、混じえて、ぎゅっと。じんと。 Fin.