「足が」
「それは知らない」
「──空を飛ばしたら酷だと思うんだよ」
「……そのこじつけは、どうかと思うけど」
ツンと、そっぽを向く。
「──で。告げたいことってなんですか、お嬢さん」
何それ、ご機嫌取りの側近役か。
「私、今、拗ねてます」
「じゃあ手でも繋ぎますか?」
「いいえ」
うーん、残念。彼はパッと明るく笑う。本当、いつまでそこにいるつもり?
「じゃあ、愛情表現が下手っぴな三菅サンに告げます」
「──なんですか」
「それは、揶揄うじゃなくて構って欲しいの態度だと思います」
「〜っ!」
うっさい、馬鹿。呟いて、それからニヤつく佐脇に早くそこから出てと叫ぶ。
「彼女が可愛すぎるから、無理。近付くとか無理。頭冷やす」
「それは体が冷えてると思う」
水溜まりに立って頭を冷やす人、初めて見た。
──ていうか。
可愛いとか、言わないで。私まで、水溜まりに靴を染められなければならなくなる。