お嬢様とピアニスト

「はい、お父様…。」

花奈は小さくため息をついた。

こうなることは分かっていた。

それなのにどうして自分の意思で行動してしまったのだろうか。
✱ ✱ 1週間前 ✱ ✱


「お嬢様、到着致しました。」

「ありがとう、行ってくるわ。」

今日は、私、桜木花菜(さくらぎかな)が通う白川市立白川高等学校の始業式。

私は、今日からこの白川高校の2年生になる。

教室へ向かおうと思い、ふと前を見ると掲示板に人だかりが出来ていた。

手を取り合って喜んでいる様子も見られる。

(クラス替えか、いいな…。)
白川高校には、2つのコースがある。

1つは、ごく普通に暮らしている人、いわゆる一般人が通う「一般コース」

先程掲示板に集まっていた人達がそのコースだ。

もう1つは政治家の子供など、家が財力をもつ生徒が通う「特別コース」

私が通っているのは特別コース。

と言っても、望んで通っている訳では無いのだけど。

私のお父様、桜木悟(さくらぎさとる) は、(よわい)26にして自分の会社を立ち上げ、瞬く間に大企業へと発展させた実力者。

私は将来この会社を継がなくてはならない。

これはもう、私が生まれた時からの決定事項。

会社内での相続争いを無くす為らしい。

だから、今のうちから経営について学んでおけ、とお父様に半強制的にこの学校に入学させられた。
特別コースは私と同じような境遇の生徒ばかりで形成されるため、人数が少なく、1クラスしかない。

だから一般コースのような、クラス替えもない。

仲良い友達と離れないのはいいけど、クラス替えが無いのはちょっと残念。

「ガラッ。」

「お、花奈!おはよう!」

「海里!おはよ〜。」

教室に入ると、私の親友の若草海里(わかくさかいり)が近寄ってきた。

海里はショートカットで、名前も性格も男っぽいけれど、とても元気でフレンドリーだからか男女共に人気があり、友達が多い。

「花奈、どうかしたの?なんか様子変だよ?」

「そうなんだよ〜、聞いてくれる?」