「ちなみにさ、相手は誰なのか聞いてもいいわけ?」
「まあ、いいけど。」
「誰?」
「よしのと仕事一緒に何度かしたことあるって言ってた。」
「マジで!?…………ききたいような聞きたくないような。」
「カホっていうスタイリストなんだけど。」
「え。」
よしのは、絶句する。

「おいもしもーし。 聞こえてる?」
「…………そっか。うん。聞こえてる。」
「知ってる?」
「高岡は、今までカモフラージュだったわけ?」
「え?」
「いい女の趣味してんじゃん。……… 」
そう言われて悪い気はしない。
「何回か、撮影で一緒になった事ある。高岡の話もした。高岡の番組の担当だって言ってたから。でも、最近見ないけど、やめたの?」
「テレビからファッション雑誌に移ったんだよ。」
「………そっか。いや、ホントにおめでとう。お幸せにね。」
「ありがとう。」
「突撃取材の件は、任せておいて。この企画の有終の美を飾らせていただきます。」
「………さんきゅ。助かるよ。」
「じゃあね。」

そして電話は切れた。
俺は、大きくため息をついた。
よしの、いい奴。マジで。気持ちに応えられないのは申し訳ないが、それは仕方のない事だ。