泣かないように唇を噛み締めた。

もうここには来れないかもしれない。

急いで靴を履く。

「紬、あんまり無理するなよ。」


響ちゃんの優しさが涙腺を弱くさせる。

響ちゃんの前では泣いたらダメだ。


「響ちゃん、ありがとね。」


ちゃんと目を見て言えた。

響ちゃんが優しく笑う。


大好きだったよ、響ちゃん。


伝えられなかったけどずっと大好きだった。


隣の自分の家には帰らずエレベーターで降りて、マンションのエントランスで携帯を取り出した。


響ちゃんと咲さんが愛し合う部屋の隣で眠れるはずなんかない。


目を手の甲で擦りながら電話を掛けた。