「そんな過去があったんだね……」

話が終わった後、ロネはアテナを見つめた。その目からは涙があふれていく。

「頑張ったね。辛かったね」

ロネがアテナを抱き締めると、無表情を作っていたアテナの目からも涙があふれていった。アテナが震える手でロネの背中に手を回す。そして、言った。

「ジャスミンが……私によくキスをしてくれた。抱き締めてくれた。こんな風に温かいって全部ジャスミンが教えてくれた……」

「うん。いっぱい愛をもらったんだね」

ロネはアテナを優しく撫でる。アテナはもう無表情の人形ではない。心を持った人間だ。そこに誰の血が入っていようと関係ない。ロネはユミルを睨み付ける。

「アテナをこんな風にしたのはあなたなんですよね?俺はあなたを絶対に許さない!!」

「面白い。私と戦う気?」

ロネは杖に魔力を集中させ、いつでも魔法が使えるようにする。ユミルはそれを見ても動じることなく体に力を入れた。すると、狼の耳や尻尾が姿を見せる。