魔法使いのロネ・ガランテは、アテナ・イェーガーを守りながら目の前に突然現れたユミル・イェーガーに警戒する。もしかしたらアテナの命を狙っているかもしれない。ロネの心臓がドクドクと音を立てた。

「あなたは一体……。アテナの知り合いですか！？」

ロネが訊ねると、ユミルはため息をついてロネを鬱陶しそうに見つめた。

「流れ的にわからないわけ？私はアテナを育てた母親のようなものよ」

「えっ……。人狼の！？」

ロネはアテナを見つめる。アテナは思い詰めたような表情で頷いた。

「どうしてこんな時に……」

「それはその子の過去が関係してるのさ」

ロネの問いにユミルはアテナの過去を話し始めた。



アテナーーー少女は物心ついた頃から森の中で暮らしていた。と言っても、幼すぎる彼女にできることなどほとんどなく、地面に落ちている木の実を食べ、木の下で眠るという生活だった。

街には行きたいと思わなかった。少女が街に行こうとすると、過去に蔑まれ石を投げられた記憶が蘇ったからだ。彼女は独りで生きていた。人など見たことがなく、彼女にとって自分以外の人間は危険な存在だった。