「雪は僕のこと嫌いじゃないんだよね?」

「うん」

「じゃあこっち来て」

目を輝かせ、天宮さんは私の手を引く。私は何だろうと首を傾げながらリビングに向かう。テーブルの上には一枚の紙が置かれていた。私はため息をつきたくなる。

「天宮さん、これは何?」

「何って婚姻届だよ?」

天宮さんの欄はしっかりと書いてある。天宮さんは目を輝かせたまま「さあ、雪!こっちに書いて」とペンを渡した。

「何で急に婚姻届を?」

「だって、閉じ込めたくっても雪が嫌がるから……。結婚しちゃえばもう雪は僕のものだよね?さあ書こう!」

あなた、仕事をきちんとしてたんですか?私は呆れてしまう。結婚……嬉しいことだけど……。

「天宮さん、今はまだ書けない。せめて大学を卒業するまで待って?」

「何で?僕のこと嫌いなの?好きじゃないの?」

「まだ気持ちの整理がつかないの。それに無理やり天宮さんが婚姻届を書かせたら有印私文書偽造罪、偽造私文書行使罪、公正証書原本不実記載罪に問われちゃう」