「考えられないけどなぁ、私だいぶ好きだよ、君のこと」
今は。
ずるいかもしれない、そう思いながらも私は決してその一言は口には出さず、心の奥へ押し込めた。
無邪気に永遠を信じられる人は強いと思う。
私も君もそんな風には強くなれない。
付き合う、なんて口約束は酷く脆くて危ういものだ。
なんなら結婚でさえ、書類一枚の出来事なのだ。
君のことが大事だ、とてつもなく。
失うなんて、他の人がそれ以上になるなんて、考えられない。
けど、それはあくまで「今は」。
今まで出会ってきた人の中でいちばんだったから、あなたを選んでいる。
そこには自信がある。
でも、私が生きてきた世界なんてほんの一部で、出会ってきた人も世界中を思えば、ほんのごく僅かだ。
この先君以上の人が現れない保証なんて、君以外の人に心が動かない自信なんて持つことが出来ない。
この先何があるか分からないのに。
それは君にだって等しく言えることだと思う。
一生好きだとか、君以上の人はいないとか言えたら、君を安心させることができるのかもしれない。
もしかしたら君はそういう言葉が聞きたいのかもしれない。
でも、心から思ってもいないのにそんな無責任なこと、到底言う気にはなれなかった。
だから私はいつも、当たり障りのない言葉で逃げるのだ。
心から永遠を信じられる人に、私はずっと憧れていた。
「嬉しいこと言ってくれるね」
君はそう言って、今度は本当に嬉しそうに笑ってくれた。
君のほしい言葉を選べたのだろうか。