強い日差しも段々と弱くなってきて、教室のクーラーはもうついていない。

一緒にドーナツを食べに行った日から数日経ったが、私達はおそらく一回も会話をしていなかった。
もちろん話したかったけれど、今度はなぜか避けられているような気がした。

でも、今日は気合を入れて元気にならなければ。なぜなら――


「LHR修学旅行のことだよな」
「そうだよね、あと一ヶ月ちょっとだし」
「楽しみだよなー沖縄」
「ねー」


高校三年間のうちのビッグイベント、修学旅行三泊四日in沖縄が差し迫っていた。


太一となっちゃんとそれぞれ行きたいところを出し合う。
もちろんそこにいけるかは分からないが私たちは修学旅行係だ。自分たちの希望を強行できるのが係の特権というものだろう。


「とりあえず班は四人一組な。男女各二名ずつ。班長も決めて報告すること」


そう簡潔に述べた担任は早く決めろと言わんばかりの真顔で椅子に座った。


「えっ……」


一瞬の静寂の後、みんなは各々席を立って仲の良い友人のところへ。
私も後ろを向いてなっちゃんと同じ班になった。


「男子どうする?」
「流れに身を任せる」
「東雲と同じがいいくせに~」
「……できれば同じがいいけどさ」


あと伊藤さんとは違う班になってほしい。
切実なお願いだ。


「奈月、彩」


迷っていると太一に呼ばれた。


「なに?」
「同じ班ならね?」


あっさり声をかけられた。

まあ、私たちと一番仲のいい男子は太一だろうから、この展開は当たり前と言えば当たり前なのだけれど。


「なる!」
「いいけど、もう一人は?」


なっちゃんの問いに太一が得意げな顔をする。


「おい、挨拶」
「……よろしく」


非常に不機嫌な――夕くん。


「太一、よくやった!」
「まあな」


こそこそ話の二人をよそに、「よろしく、夕くん」と声をかける。


「ああ」


彼の虫の居所の悪さには、気付かないふりをした。