「どうしたの梓」



この歳の子がある意味一番難しい。

それでも何ていうか、この子には甘えさせたいとも思ってしまう。

特別扱いは好きじゃないのに。


…僕と似てるからかなぁ。



「あのね、」



覗いてびっくり。

顔を真っ赤にさせて、瞬きをパチパチと繰り返す女の子。

まるで内緒話をして誰にも聞かれないように。


梓は僕だけにしかその笑顔は向けなかった。



「───…ありがとう。」



やっぱり僕はこの笑顔の為にここに来たんだよ。

男ばかりの場所で大人ばかりの場所で、きっと毎日窮屈だろうから。



「うん。また一緒に来ようね」



どうしてか君といると僕は新撰組であることを忘れてしまう。

ただの町人に戻ったみたいで、それがどうしてかこそばゆくて。



「よしっ、じゃあ梓!家まで競争!」


「…家…?」


「そう、屯所は僕達の家でしょ?ほら早くしないと置いて行っちゃうよ」


「…うん」



変なの。


その“ありがとう”が今までで一番嬉しいなんてさ。