サァァァァァ───…。


木々は揺れ、木の葉はヒラヒラと舞う。

小鳥のさえずりに、遠くから微かに聞こえる子供達のはしゃぐ声。


あったよ、物語の続き…。
お姉ちゃんの言った通りだったんだよ。

その人はね、やっぱり会いに来てくれたの。

迎えに来てくれたの。


またいつか心優しい鬼さんに皆にも会わせてあげる。



「───梓、」



私にだけ聞こえるように。

私にしか聞こえないように。





「俺はお前を、



────…愛している。」





今日は、おかしい日。
とてもおかしくて変な日。

でも、そんな日は決まって後から訂正されるよね。


おかしくなんか無かったんだって。


これは私の人生でとても幸運な日なんだって。



「土方さん…っ、ひじかたさんっ」


「大丈夫だ、俺はここに居る。…もうどこにも行きやしねえよ」



やがて土方さんは少しだけ体を離すと、私を見つめる。


そしてゆっくりと息を吸う。


時間はたっぷりあるから、もう死に急ぐことも生き急ぐこともしなくていいから。

それを全身全霊で味わうみたいに。



「これも1度しか言わねえからな。…絶対聞き逃すんじゃねえぞ」