「俺の帰る場所はいつだって、お前が居る場所なんだ」



男は1歩、1歩と近付いて私に影を作る。

そんな瞳は潤んでいて、私の流れる涙を何度も何度も震える指ですくった。



「手紙、…ありがとうな」



頷くことしか出来ない。


笑えばいいのか泣けばいいのか、怒ればいいのか。

感情が分からなくなって、それでも涙を拭ってくれる温もりが何も変わっていないから。



「俺もお前に言いたいことがありすぎてよ、」



地獄の底から戻ってきた───。



「っ……、地獄…?」


「あぁ。お前が居ねえ場所は驚くほど真っ暗なんだ」


「……ひじ…、かたさ───…っ!」



彼はゆっくりと私の腕を掴み、素早く引き寄せる。



「っ…、」



そして強く強く腕の中に閉じ込めた。


隙間なんか無いくらいに。

後頭部と背中に当てられた手は、微かに震えている。



「土方さん…っ」



シャラン───…。


揺れた首飾りが私達を祝福してくれているみたいで。

また、涙が溢れた。



「いいか、1度しか言わねえからよく聞けよ」



耳元に熱い息がかかって、少し掠れた低い声に肩が跳ねて。

そんな動きに土方さんの抱き締める力は強まった。