そして私はよく知っている。
信じていたものに裏切られることがどんなに辛く、苦しいことなのか。

求めさえしなけばもうあんな想いしなくて済む。


「…何でもないよ」


琥珀にこのどす黒い感情を悟ららないようににっこりと笑ってみせる。
大丈夫だと心に言い聞かせて。


「いや明らかに顔色が悪い。少し休むぞ」


とりあえず笑っておけば誤魔化せると思っていた私だったが、どうやら自分が思っている以上に私の顔色が悪いらしく琥珀がさらに心配そうに私を見つめる。

やめて。優しくしないで。
いつか離れていくのなら私に希望を持たせないで。


「大丈夫だよ。時間も押してるし休んでる暇なんてないでしょ」


心配そうに私を見つめる琥珀の言葉を私は笑顔で拒否する。


「任務より紅の方が大切だ」


だが琥珀もそんな私に負けじと私の言葉を受け取ろうとせず私の腕を掴んだ。


「嫌っ」


それを私は咄嗟に叩く。


「…紅」


私に腕を叩かれた琥珀は一瞬だけ辛そうな表情を浮かべた。


違う。そんな顔をさせたかった訳じゃない。
嫌だ。私は何を言っているの。私はまだ彼らと共に居たい。優しくされたい。またもう一度離れてしまうのなら最後の彼らとの時間を楽しみたい。


「…っ」


感情がぐちゃぐちゃになる。
正反対の想いたちがぶつかり合って私の心をかき乱す。

前まではもっと上手くやっていた。感情にこんなにも激しい波なんてなかったし、自分の機嫌は自分で取れていた。