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雑貨屋さんをしっかり楽しんだ後、また琥珀と2人で街を歩き回り始める。

よし!可愛いを十分楽しめたし、切り替えて任務に集中しよう!

そう気合を入れて前を見た時だった。


「…っ」


彼女の姿が一瞬だけだが、私の視界に入ったのは。街の雑踏の中を可憐に歩いていた彼女。
たった一瞬だった。
それでも私は最悪な記憶が一気に頭の中を駆け巡り、嫌な汗をかく。

私は彼女…姫巫女が嫌いだ。

あの私とは違う愛らしい姿も。女の子として当然のように生かされて誰からも愛されてきた人生も。
言葉一つで全てを魅了してしまう人柄も。

彼女を形作る全てが嫌いだ。


「紅?」


私の様子がおかしいことに気がついたのか、琥珀が私を心配そうな目で見る。


あぁ、今は。
今だけはそうやって私を見てくれるけれど、琥珀も含めてみんな、私をそんな目では見てくれなくなる。いつか私から離れていく。

忘れてはいけない。前回の散々だった人生と同じではいけない。
同じであれば私はまたあの時のように傷つくのだから。

例え神様の言葉でも信じてはいけない。
信じられるのはいつだって私だけ。

1度目はそうだった。