『では琥珀のアナタへの優しさ、歪めずにきちんと受け止めてくださいよ?』

『うん』

『私は神様です。アナタが考えていることなんて手に取るようにわかります。誤魔化しは効きませんよ?』

『うん』

『いつでも見ていますからね。アナタが気を抜いている時でさえも欠かさず見ていますからね』

『うん』

『いいですか?少しでも歪んだ…』

『…もうわかったから!うるさい!』


最初こそ厳かな感じで話していた神様だが、だんだんただの口うるさいだけになってきたので流石に鬱陶しくて心の中で私は思わず神様に大変失礼なことを叫んでしまった。

でも許して欲しい。神様でもうるさいものはうるさい。

そんな私の叫びを受けて『ひどいです!本当に心配しているのに!』と半分ふざけたような声が聞こえたのでもう私は無視をすることにした。


「紅」

「ん?」


神様との会話を終えたタイミングで丁度琥珀が私に声をかけてきたので私はすぐに頭の中を切り替えて琥珀に返事をする。


「そのマグカップ気に入ったんだな。デザインも神々しいようだし」

「へ」


優しく琥珀に微笑まれて思わず変な声を出してしまう。

そっか。私神様と話している間、ずっとこのマグカップを持っていたんだ。
めちゃくちゃ変だったがこのマグカップのことを絶賛した訳だし、気に入ったと思われる条件は完璧に満たしている。


「まぁ、うん。可愛いよね、これ」


私はとりあえず琥珀に笑ってみせてマグカップをそっと棚に返した。
気に入っている…とまでいかないが今の状況を説明する訳にもいかないので、適当なことを言っておこう。