「紅」
「ん?」
そんなことを思いながらも歩いていると急に琥珀が立ち止まって私の名前を呼んだので私も琥珀と同じように止まった。
「ここ入らないか?」
そして琥珀は目の前にある小さな雑貨屋さんを指さした。
「ん?何で?」
そんな琥珀の言動を不思議に思って私は首を傾げ琥珀を見つめる。
今回の任務は目立ってなんぼ。雑貨屋さんに入る意味はない。
だから前回のこの任務の時には本当にただ琥珀と話をしながら街を歩いていただけだった。その方が効率がいいし、正解だろう。
では何故琥珀は店に入りたいのだろうか。
妖の気配がする、とか?何か任務に関係があることがある?とか?
「…」
いやないな。
この雑貨屋さんは前回全くこの任務に関係なかったはずだ。私がこの雑貨屋さんを覚えていないことが何よりの証拠。
この一瞬で琥珀の意図を考えてみたが全くわからない。
「入りたいから」
「いや、答えになってなくない?」
「いいから行くぞ」
私の問いかけに琥珀が真顔で答えたが明らかに私の問いの答えになっていないのですぐにツッコミを入れる。
だが、そんな私なんて無視して私の手を掴んで琥珀はさっさとその雑貨屋さんに入った。