「…なーに怖い顔しているの、紅」



疲労を感じながらも今日の夜へ向けて自分を奮い立たせていると目の前に座っていた蒼がそんな私をおかしそうに見つめた。

ポーカーフェイスは得意なのだが、今の私は疲労もあり、つい思っていることが顔に出てしまっているみたいだ。


気を引き締めなくては。



「…疲れているだけだよ。合宿がこんなに辛いとは思わなかったから」



あくまで私は〝初めて〟この合宿に参加している身だ。
なので今は疲れた表情を浮かべてこんな感想を言うのが妥当な答えだろう。

私の答えを聞いた武が隣で「だよなー。話には聞いていたけど思っていた倍は辛いよな」と私に共感してくれた。

ナイス援護射撃だ。



「俺には紅が力をセーブして程々にしているようにしか見えなかったけど。それこそそこまで疲れるほどは力使っていないだろ」



武の援護射撃に心の中でほくそ笑んでいると蒼の隣に座っていた琥珀が無表情ながら不思議そうに私を見つめてきた。

何て鋭い考察なんだ。



「…そんなことない。もうヘトヘト」

「…」

「ほ、本当、だよ?」

「…」

「…うぅ、目だけで訴えて来ないでよ」



私がどんなに疲れた顔で弁明しても琥珀は疑いの眼差しで私を見つめ続ける。
しかも無言だ。

無言の圧がすごい。